キャリア開発におけるコンプライアンスの重要性について )     

 (第4章第1節のみ掲載してあります。全文をお読みになりたい方は私までご連絡を) 

  

はじめに

第1章           コンプライアンスとは何か

1.       みずほ証券によるジェイコム株誤発注

2.       コンプライアンスとは何か

第2章           人口構成の変化がもたらす社会の変化

1.       ピラミッド社会

2.       人口ピラミッドの変貌

3.       情報伝達経路の変化

4.       ピラミッド社会からネットワーク社会へ

第3章           ネットワーク社会を成り立たせるもの

1.       ネットワーク社会を成立させるもの

2.       ゲームの理論

3.       すっぱいレモンと腐った牛乳

4.       コンプライアンス

第4章           守りのコンプライアンスから攻めのコンプライアンスへ

1.       隠蔽と発覚のリスク

企業などでコンプライアンス違反が起こった場合、ともすれば当事者には隠蔽しようというインセンティブが働く。自分の違反を正直に報告したところでペナルティーは逃れない。一方、その業務を掌握しているのは自分であり、自分が上手く隠し通せば発覚しない可能性もある。従って隠す。

功利的に考えれば、正直に話したときのペナルティーと、隠していた違反が発覚する確率とその場合のペナルティーの積を比較して、損害(期待ペナルティー)の少なくなる方を選ぶのである。ところが、この大変功利的な計算も、時間の要素を加味するとまったく違った結果が得られることがわかる。

監査等があるとして、1回の監査を潜り抜ける確率と2回の監査を2回とも潜り抜ける確率を比べると、当然2回とも潜り抜ける確率は低くなる。つまり発覚する確率は高くなる。逆に隠していた場合のペナルティーは隠していた時間の経過に比例して重くなる。粉飾決算などを考えてみれば分かる通り、違反を隠しつづけるためには、嘘に嘘を重ねることが必要になるからである。当然違反が発覚する確率と経過時間の積で表される期待ペナルティーはどんどん大きくなる。

以下の簡単な数式とグラフで示す。

時間=t

ペナルティー=P

監査を潜り抜ける確率=0.8

とすると、隠していた違反が発覚した場合の期待ペナルティーは

P=(1-0.8t)×t

で与えられる。

一方、最初の時点で告白してしまえば期待ペナルティーはある一定水準にとどまる(最初に告白してペナルティーが与えられれば、それ以後追加的にペナルティーが与えられることはない)とすると

P=1

で与えられる。

グラフ化すると以下の通り。


当初こそ隠した方が期待ペナルティーは小さいが、ある一定の時間経過後は隠している場合の期待ペナルティーがどんどん大きくなっていってしまうのである。

これでは、最初から告白した方がましではないのだろうか。隠蔽すれば当初はかなりの確率でペナルティー無しですむ。しかし、後々に発覚したときの損害を考えれば、現時点で違反を告白するだけでなく事後対応策や再発防止策を明確にした方が、長期的メリットははるかに大きいのではないだろうか。告白することは短期的にはペナルティーを伴う苦しい選択である。禊ではないが、ペナルティーを受けることで負の遺産を一掃、新たな挑戦に立ち向かうことが可能になる。守りから攻めへの転換点となりうるのである。

人間の行動に100%の完全性を期待することはできない。そうであればこそ、失敗したときには適切な対応が求められるのである。

 

2.       アカウンタビリティー

3.       求められるコンプライアンス意識

第5章           結論